かつてない厳しい年だった。コロナウイルスの影響は大きかった。リーマン・ショックのときも、進路を変更せざるをえない生徒もいたが、その比ではなかった。
予想した問題は起こってしまった。
本来ならその学年で習うこととなっている学習内容も、かなりの学校で宿題という形で課された。授業も行われず、不十分な理解で学年をすすめることになった高校生も多かっただろう。
予想されたより大きな問題は、メンタルヘルスの問題だ。コロナウイルスで大きく生活が変わってしまった。不安が蔓延する中で、心身ともにバランスを崩してしまう生徒が多かった。
1年生も大変だった。学校が4月になっても始まらなかった。そのため、春期講習を延長して基礎的な高校英文法を終わらせた。
高校1年生が受ける影響が大きいことはわかっていた。学校の進度も遅れる予想は立てていた。高校1年生の最初で習うことは基礎の基礎。それを学校ではカバーできないまま高校生活がスタートするという尋常ではない一年の始まりだった。
夏休みは短縮され、外に出るのも危険な温度の中で通学。多くの生徒が体調を崩した。
模試も、会場では行われず、貴重な訓練の機会を失った。
睡眠の重要性はずっと話してきたが、睡眠サイクルも多くの生徒が狂った。オンライン自習室、声掛けなどは欠かさず続けたが、学校の課題も多く、1年生は疲弊してしまった。授業でやってないところを課題でこなせない全国の高校1年生も多かったのではないか。
夏以降は更に疲れがでた。模試などで結果は出ているものの、生活リズムが崩れていては継続できない。
3年生、受験生のノザキ塾の受験生の平均学習時間は10,000分前後。4月以降に入塾する生徒はもっと学習時間が多かった。
2020年度受験生クラスで、もっとも学習時間が多かったのはM君。127,921分。平均値に達したのはMくんだけだった。
夏に疲れが出ると、受験は厳しくなる。8月の時点で、受験生クラスの全員が、例年の平均値に到達しないという異常な事態。
睡眠も崩れた。軽度の状態まで含めれば、高校生の半数以上が精神的な問題を抱えているという報道もあった。学習計画を機能させるには記録が必要。そして、その記録をするためにも睡眠は重要。体調が崩れることは全てに影響する。
今年度1,2年生に関しては、例年の40%以下の学習時間と目を覆いたくなるような惨状だった。
学校の課題、補習に追われたからだ。例年より進度が遅いため、生徒が理解できなくても進む。理解出来ない授業ならそれは勉強したことにならない。
学校の課題・補習に追われ、理解も記憶していないまま進級してしまった人も全国でたくさんいるだろう。コロナ世代と呼ばれる人間を作り出していると言える。
3年生、浪人生は本当にギリギリの状態だった。
例年なら自習室もあり、浪人生は学習しやすい環境だった。
三密状態を回避するために教室を閉鎖した。後遺障害などの報告があがるなかで、今後教室を再開することは出来ない。何もわからないなら最大限安全に配慮するべきだろう。
この状況で、教室で授業を行うことは、人命を軽視していることになる。それは出来ない。
体調を維持できれば、S君はもっと結果を出せただろう。自習室が開けられる状況ならMくんももっと合格出来ただろう。Y君もそうだ。Uさんも教室があれば、かなり違ったはず。共通テストで十分な得点をとっていたのだから、受験できれば面接だけなのだから、合格は出来たはず。
もう、全員は助けてあげられない。
浪人生は記録をし、連絡をし、授業を休まず、ミーティングを休まなかった。それでもギリギリだった。
現役生は、当たり前だったことが出来なくなった。全力は尽くすけれど、やるべきことをやっていなくて結果は出せない。
出来た生徒は結果を出せる。そうでない生徒は結果は出せない。
こんなことは言いたくなかった。でも、出来ると言ったらそれは嘘だ。偏差値40台や40台を切るようなところからの受験でもなんとかしてきた。
みんな、記録をしっかりし、ミーティングに出席し、連絡を欠かさなかった。学習計画が機能するためにはどれか一つが欠けてもうまくいかない。うまくいくはずもないんだよ。
私達はどん底にいる。
6年制でありながら、高校1年生の段階で文系の全国偏差値47.5で校内の上位30%くらい。
三重大、名古屋大学を目指すと謳いながら名古屋大学はいつものことながら1名も合格せず、三重大ですら3名の合格者の高校。
全統記述模試で英語の偏差値50あったら、上位30%以内の高校。高校の数学の平均点だと全国偏差値40.5。これは下からおよそ15%の数値だよ。でも三重県の入試では偏差値58くらいはあるわけだ。
完全に学力は底を抜けてしまった。
現在の数字の恐ろしさを感じているのは、ずっと記録しているからだよ。一年で取り戻せない生徒がほとんどになることが見える。高2の間に時間切れになる生徒もこのままでは出る。どんな状況でも覆せると言ってやりたいけど、それは嘘だ。
今年は学校とのバランスを考えて、現役生は配慮した。でも、もうそれはできない。成功はわからないけれど、確実に失敗することはわかる。指示に従ってもらってもギリギリだ。今までならなんとか出来たことも、今後は難しい。
大体、1年生の模試の成績が、その学校のピークであることが多い。
今まで通り3年生で低下することを考えても過去最悪だけれど、この一年間でもっと都会との格差は広がった。予想を超える下落があると考えて備えなければならない。
今までずっと言い続けた記録をすることを続けた生徒たちはこの状況でも切り抜けた。
前進するには記録するしかない。記録しなければ、どこを改善すればいいのかもわからない。記録しなければ、振り返ることもできない。必ずこの一年を振り返ろう。このままでは受験前に終わる。
2021年度、これまで以上に厳しい状況だけれど、思考停止することなく考え続けよう。