推薦入試をつかうことは安全なのか?
推薦入試、AO入試の受験者数は増加し続けています。平成29年のデータでは大学入学者の44.3%がAO.推薦入試です。
この文科省のデータから明らかなように、推薦入試も大学進学を目指す上で考慮に入れるべき対象になっているということです。
第一志望の大学が推薦入試がある場合、それは検討するに価値があります。指定校推薦枠があればそれが最も合格可能性が高いことは間違いないですからね。
ですが、それ以外の受験形式の場合、推薦入試を使うことは、第一志望の大学の合格可能性を下げる可能性があるという意識はありますか。
どんな選択にもリスクはあるので、それを考慮する必要があるということです。
当たり前ですが、私達は学校と違って、生徒の受験が失敗したら生活に直結するのでできるだけ安全な方法を考えます。
不合格になったら来年の生徒は減るわけですから。
そして、絶対や確実というのは存在しないということを痛感させられている。可能性を上げるために必死でやっています。
そんなに考えずに推薦入試を使って失敗する生徒は一定数いるんですよ…
倍率が低いから受かる?
そんなことはないですね。
高校受験でも、倍率が1倍を割っていても、不合格になる生徒がいるのは高校受験を経た生徒ならわかっていると思います。基準点に満たなければ、不合格になります。当たり前ですね…
が、大学受験になるとその意識が薄れてしまう生徒も多いようです。
ノザキ塾がある鈴鹿市で、大学受験を考えている高校となると、公立高校だと神戸高校が代表的でしょうか。
普通科の倍率は1倍ないんですよね…でも、不合格になる受験生もいますよね。
大学受験の場合は高校受験とも違い、全国から受験生が集まります。まず。これが大前提です。
評定平均が高ければ安心なのか?
評定平均だけで決まる大学受験ならいざしらず、殆どの場合は学科試験や面接があるわけです。
評定平均と面接の受験なら、他の受験生も評定平均を揃えてきますからね。
とくにはじめから推薦を狙って3年間学習してきた受験生もいます。
推薦入試に特化した学習計画を立てていれば、志望動機書、面接の練習、小論文の練習など徹底してやりますしね。
滑り止めになんとなく片手間でやって合格できるのか。難しいです。
当然、対策をせざるをえないわけですから、第一志望の大学のための学習時間が減ります。
終わったら切り替えてって言う受験生もいますが、時間切れになってしまう受験生がいかに多いことか。
面接対策など推薦の受験対策をやればやるほど、本命の対策は出来ない。トレード・オフの関係です。
じゃあ、学科試験だけなら負担がかからないか?
「学科試験なら、一般受験と科目が同じだから、負担は少ないから…」そう思うかもしれないですね。
ちょっとまってください。本当に問題をみましたか?
これは一般受験ですけど、大学の問題を見てみましょう。
大学によって全く形式は違います。ちょっと授業で使ったものなので、書き込みがあって見にくいですが、訳出が5つ。要約問題、本格英作問題ですね。
これは早稲田の商学部の問題ですね。長文5題。会話問題もありますが、実質長文問題です。
大学によって全く出題形式は違う。
いちばん重要なのは過去問演習だとずっと口を酸っぱくして生徒には言っているのはそういうことです。
学習計画も、テキストのやり方もすべて過去問をやった上で考えて計画を立案して、日々、修正しているわけです。
推薦入試、一般入試を問わず、過去問から逆算してやる必要がありますし、特化すればするだけ上達します。
時間を取り戻すのは大変だ
当然、推薦の対策をすれば本命の対策の時間は奪われますし、勉強時間が空いた分を取り戻すのは失った時間以上に難しいんですよ。
私のところで、推薦入試を使った生徒が取られる時間は平均すると5,000分前後です。大体10000分あれば、全統記述模試の政経で偏差値60に乗るくらいの時間ですね。
んじゃ、5,000分なら受験までに取り返せるって?
簡単じゃないですよ。
大体11月に合否の結果がでて、センターまでに60日くらいですかね。
一日100分やったら50日で間に合うと計算するかもしれないですけど、そうはいかない。
大体、この時期になると勉強時間は限界まで到達していることが多いです。増やせて30分くらいですかね。
となると166日かかります。受験終わってますね。
そして、対策できなかった分、忘れているのを取り戻すのにさらに時間がかかります。
国公立大学受験生だったりするとなおきつい。科目数が多ければ多ければ、どうしても弱い科目が出るのは当然ですから。
数学の公式忘れて問題解いたりするのは無理ですよね。
コンスタントに出来ないって物凄くデメリットあるんですよ。
滑り止めを楽にとって、受験に専念という風に考えたいのは良くわかるんですが、失敗した時のリスクは物凄く大きいですね。
睡眠時間を減らして頑張るって?
そうじゃないわけです。睡眠時間を減らしてはいけないわけです。
そして、推薦の難しさというのは問題が公表されてなかったり、ボーダーラインが明示されてない受験も多いわけです。
もう、こうなるとバクチに等しい。受かればもちろんいいですよ。でも、私達は結果オーライというわけにはいかない。浪人できないという家庭もある。
無責任に冒険はさせられない。少しでも合格可能性をあげられる方法を考える。運に頼るなら私達の仕事はいらないわけですから。
学校のレベルを知る必要がある
先程例にあげた三重県の神戸高校が、全国でどのレベルにあるか考えてみましょう。
学校の平均で全国偏差値を出せば、学校がどの程度のレベルにあるかわかりますね。
評定平均以外で勝負となると、当然学科試験ですね。
特に、模試では良くないけど、評定平均がいいという人は要注意です。模試は全範囲出題されるわけで、学校の定期テストが出来るからと言って入試で通用するとは言えないわけです。
学校の平均点が、全国平均点より高ければ、少なくとも全受験生の中で真ん中より上とは言えるわけですね。
2019年の全統記述模試、平均点に着目して考えてみましょうか。
英語で考えましょう。
英語は、全国平均点76.6点で、神戸高校の平均点は59.9点。
2019年第一回の全統記述模試は、英語の平均点が76.6点 標準偏差が36.4です。
となると、神戸高校で真ん中なら偏差値45.4ですね…
神戸高校で真ん中でいても、偏差値50はない。つまり全国では真ん中より下です。
学校で、真ん中より上にいても、全国偏差値は50にいかないことは十分あるわけです。
これ、数学と、物理、化学なんですけど、どの科目として真ん中にいても偏差値50はないです。
数学Ⅲ型は、全国平均点が84.1、標準偏差が46.1ですから、神戸高校の平均点なら全国偏差値42.8です。
この生徒の場合は上位30%くらいの位置にいますけど、全国偏差値は45です。真ん中より下ですね。
では、物理をみてみましょう。
全国平均点が37.3 標準偏差が18.8 神戸高校の平均点が19.5。
神戸高校の平均点なら全国偏差値40.5です。こういう偏差値40って言うと、全国で下から15%くらいのイメージを持っていてもらうといいですかね。
この生徒の場合、上位30%以内にいるんですが、全国偏差値は43.5です。
嫌になりますが、更にみていきましょう。化学ですね。
全国平均点が40.0 標準偏差が18.3 神戸高校の平均点が27.7点 神戸高校の平均点なら全国偏差値43.3です。
今度は同じく鈴鹿市にある鈴鹿中学を例に取ってみましょうか。
もう、ちょっとみていて気が滅入ってきますが、生徒のリスクを減らすためには事実を書いていくしかないですね。
2019年第一回の全統記述模試は、英語の平均点が76.6点 標準偏差が36.4です。鈴鹿中学の平均点は75.0点です。鈴鹿中学の真ん中なら全国偏差値49.6です。
高校の編入だと偏差値68くらいあるんですよね。三重県なら悪くはないわけです。というか、上位です。
ですが、鈴鹿中学の平均点なら全国の真ん中よりは低いわけです。
では次に国語もみてみましょう。現代文・古文・漢文型ですね。
平均点が72.7点。標準偏差が25.3点です。鈴鹿中学の平均点が67.3点です。鈴鹿中学の平均点なら全国偏差値47.9です。
最後に日本史です。
平均点が32.4点 標準偏差が18.4 鈴鹿中学の平均点27.7ですので、鈴鹿中学の平均点なら全国偏差値47.4ですね。
6年制ですが、文系の3科目、記述模試でいうとどれも偏差値50ない。つまり、学校で真ん中でも全国から見たら真ん中より下ということですね。
どうしても、周りだけ見がちで視野狭窄になることはわかりますが、こう言うところを考慮に入れる必要があります。
私も絶望的な気持ちになってくるんですが、もっとひどいところもあるんですよ…
浪人生が含まれる全統記述模試を受けない。データがない。
進研模試でそれなりに成績をとっていても、それだけを判断の材料をしないのはそういうわけですね。
公募推薦なら、浪人生が受けられるところも多いわけです。
現状の学力がわからない、そして配点もよくわからないとなると打てる方法がないんです。
それで、推薦で確実に滑り止めを取ろうという指導するところもあるわけです。
受験に確実なんて存在しないよ。
そんな方法があるなら、私達が知りたいです。
ちょっとでも生徒の合格可能性をあげたくて必死でやってるわけですけど、そんなものは見つからないんです。
入試形式の変更がある
私達は、学校と違って実績が生活に直結するので、大丈夫なんてことはとても言えないわけです。
基本的に合格は難しい。
普通にやっていたら不合格になるところを可能性をあげようとやっている。
なぜ、皆さん、塾や予備校に来るんですか?
当然、そのまま勉強していたら合格しないから来るわけですよね。
ですから、私達は少しでも可能性を上げるために必死でやる。
なので、当然、勉強会など情報交換もするんですね。
ちょっと慄然としたのは、夏の段階で、国公立受験生で今まで公募推薦に出願しなかったレベルの生徒が公募推薦を使うことを考えているという声が多く上がったことです。
参加者で、「これ、どうするの…」と絶句しました。
相当推薦は厳しくなることが予想されます。
共通テストはもうセンター試験のノウハウが通用しませんからね。
今までなら、浪人してもセンター試験ならどうやれば点数が取れるかは明らかでした。どのように勉強すればいいかはわかった。
もう、共通テストではそう言えない。
英語の配点がリスニングによることで、地方の受験生は一層不利になります。来年大混乱が起こることだけしかわかりません。
外部試験の負担を考えたら、浪人せずに確実に私立を取ろうという学力上位層が受験するのは火を見るより明らかですね。
自信を失う
問題だなと思うのが、学校によっては「推薦は簡単だ。確実だ」と言うような指導をするところもあることです。
そんなわけないのは、ここまでご覧になったらわかりますよね?
落ちたらどうなると思います?
時間を失うことも大きなロスになるんですが、一番の問題は勉強できなくなるんですよ。
推薦受験に落ちた生徒は、勉強に向かう気持ちを失ってしまう。
簡単に受かると思っていて、周りもそう言っていた。で、不合格になったとします。
それで、「大丈夫、自分は出来る!」って思えますか?
もしそう思うなら、事実を誤認していますよね。それは過信です。
そして、簡単な試験を失敗したとなったら、多くの生徒は自信を失います。
事実、推薦に失敗したら、「みんなが受かると言っていた簡単な受験で失敗するなんて、私はダメだ…」となる受験生が多いわけです。
そうやって、受験を諦めてしまった生徒もたくさん見てきています。
本当、悔しいですし、情けない気持ちになります。
推薦のリスクこれだけ話したのにと。
もし、ここで時間ロスしなかったら勝てたというのはあるわけです。
絶対はない。だから、受験機会を増やせるという形で受験するならいい。
それなら本試験につながるわけですから。
自信がなければ、勉強時間を増やすことは出来ないです。
やったら出来ると思うから前進できるんですね。出来ると思えなくて勉強を続けるのは不可能と言わないまでも相当困難です。
指導方針で自信をつけることを最重要においています。
自信がないと、そもそも勉強をすることすら出来ないからなんです。過信と自信は全然違います。
安全は幻想だと知ることが大事
この記事を読む人は、三重県以外の人が多いのでここまでひどいのかと目を疑ったかもしれませんね。
地域格差というのは厳然としてあります。
実際、三重県の私立高校に進学する生徒の多くが、公立高校の受験に失敗した生徒です。
行けるなら公立に行きたい生徒がほとんどなんですね。
となると、ランクを下げたところに入るから、相対的にその学校の中では悪くないんですね。
だから、自分が出来ると思う。確かに、学校の中では悪くないでしょう。
でも、外に目に向けたらどうか。大学受験は他の学校の生徒も受験しますね。
そして、更に目を広げると、三重県のレベルは低いわけです。
さっきの例を見たらよくわかりますね…
高校受験で失敗したから、大学受験では失敗したくないと思う。それは当然です。
でも、推薦が安全なんてことはないわけです。
受験は厳しい。私は基本的に失敗するものと考えて、計画を立てる。
だから、配点や過去問を分析してその上で計画を立てるわけです。推薦がダメでも絶望せず、最後まで諦めないためにやるわけです。
推薦入試のデメリットとしては
- 時間が取られる
- 落ちた時のリスクが大きい
- 自信を失う。
もちろん、これらを踏まえて推薦受験を考えたら機会を増やせるいいチャンスになります。
じゃあ、いい推薦入試の条件はなにか見てみましょう。
第一志望合格につながるいい推薦入試の利用の仕方
指定校推薦
第一志望の大学に学校の推薦枠があれば一番いいですね。合格率も高いわけですから。
実質的に高校一年生などで、志望校の指定校推薦枠があるなら、それを狙うのが最も負担が少ない。高校二年生から目指そうとすると、既に評定平均が足りない場合も多い。高校に入った瞬間に大学受験は始まっています。
高校進学の時点で指定校推薦枠があるところに進学したらと勧める生徒もいます。一般受験は高難易度でとても無理だけれども推薦なら容易というところもあるわけですから。
配点が明らかになっているところ
評定平均、学科、面接、小論文などの得点が明らかになっていなければ対策のうちようがないです。
いいと言うか、最低条件ですね。
対策が打てないなら、失敗しますよね。
当たり前ですけど。
改善するポイントが見えないわけですから。
第一志望、併願校と出題形式、内容が近い
先程見てもらったように、各大学で出題形式は全く違います。
科目が多くなる負担は受験生の皆さんが思っている以上に大きいんですよ。小論文や面接などの負担は大きいです。
学科試験だけでも、推薦入試と一般入試で出題形式が違う大学もあります。そういうところは難しいです。対策余分に増えるわけですからね。
合格最低点が極端に高くない
推薦入試の問題が簡単な場合は、要注意です。
あなたにとって簡単な問題は、他の人にとっても簡単である可能性は高い。自分だけが出来ると思うのは危険です。
そして今年は特に学力上位層が推薦入試を使う可能性が高いのはわかりましたね。
高得点勝負はミスが許されない受験になります。
そうなると、40%を60%にするとのは全く違った勉強が必要になる。
80%を90%にするのは難しいです。
難しさの質が全く変わるんです。80%から90%にしようとするのは、莫大な時間がかかるんですよ。
機会を増やす。あくまで挑戦だと考えるなら失敗してもデメリットは少ないですが、安全や確実だと思うと、落とし穴があります。
9月になって、気忙しくなってきたね。
ちょっとでも可能性を上げるために、ギリギリまで考えよう。安全は誰もが求めるけど、それはない。でも、可能性を上げることはいつだって出来るからね。
対策が増えること、科目数の負担について書いてあります。
たくさんの大学を受けるより、同じ大学を複数回受けるほうが合格可能性を上げるんですよ…